【感想】スパイダーマン:スパイダーバース
久々に面白い映画だったのでブログにまとめておきます。
スパイダーバース。
自分のスパイダーマンの事前知識はサムライミ版の三部作とアメイジング二部作の計5つ。どちらも実写映画で、サムライミの方は5歳の時に初めて映画館で観た作品。こう書くと結構古い感じがするけど映画としての面白さは今でも最高の逸品。実写化に合わせてデザインされたグリーンゴブリンが格好いい。
そんなスパイダーマンシリーズの最新作としてのスパイダーバース。ネットでの評判もいいし面白いんだろうなと思い映画館へと足を運んだが、観終わって考えを改めることに。
面白い??
いや……"最高に"面白い
なんだコレ。マジでヤバい。
映画館入る前は寝不足と頭痛で今にも死にそうなゾンビ状態だったのに観てるうちに治っていた。薬かよ。
薬だわ
俗に言う電子ドラッグ。観る麻薬。
何が凄いって画面がビビッドで色鮮やか、フラッシュに移り変わりに過剰演出とも思えるアクションシーン。なのに目がチカチカするだとか頭が痛くなるだとか、今何してんの?よく見えなかったけど?とか全然ない。
画面上では情報量の塊のはずなのに、何故かすんなりと脳味噌に溶け込んでいく。観ていて本当に心地良い。
というのも、この映画、最初の10秒を作るのに1年もの歳月を費やしたらしい。
10秒の映像を作り出すまで丸1年かかった!? CGアニメ映画『スパイダーマン: スパイダーバース』監督が語る | ギズモード・ジャパン
映像表現の模索に1年……。
スパイダーバースの、映像の中にコミカルな表現を取り入れた表現は確かに新鮮だった。観ていてとても面白い。
でもそれ以上に、リアルな映像の中に、コミック的な演出があまりにも自然に調和し過ぎていて、それが衝撃的で終始驚きの連続だった。
普通、何か新しいことを試せば何かと粗が目立つものだ。ブレードランナーは革新的な世界観を見せつけてくれたが画面が見やすかったかと聞かれればそれほどでもない。
でもスパイダーバースは完璧だった。疑問の余地を一切与えず、映画として分かりやすい動き、苦痛の無い画面を造形していた。
これは映像美だけではなく、キャラクターや脚本にも同じことが言える。
スパイダーバースには複数のスパイダーマンが登場する。女のスパイダーマンだとかロボットを操縦するスパイダーマンだとか豚(?)だとか、とにかく個性的なキャラクターが一同に介すが、彼らに違和感を抱くことは一切無かった。
彼らは初登場時に軽く自己紹介のような映像を流すのだが、これが全て同じスタイルで行われる。同じ文章を少し改変しただけ。これで彼らを初めて見た観客は理解する。
よく分からんがお前ら全員スパイダーマンだな!
自分も赤いノーマルなスパイダーマンしか知らなかったわけだが、どうやら彼らの過去の境遇やバックグラウンドは概ねほとんど8割くらいは同一のものらしい。
だから、奴らはほとんど初対面なのに何かと的確な状況判断を共有している。
普通の映画だったら出来ない。初対面のよく知らん奴と息の合ったコンビネーションとか出来るわけがないし、それを見せられると、観客は多かれ少なかれ物語への視線が冷めたものになってしまう。
まあ作り物のキャラクターだしリアルとは違うよね
それをスパイダーマンという概念を利用して回避している。すげぇコンテンツの使い方。こんな大胆なことが出来るかよ。
根本が同じキャラだから自己紹介は簡素化出来るし、主人公へのスパイダーマンの対応も過去の経験がバックグラウンドになってるから納得が出来る。
とにかく、観客が冷めるようなことを絶対にしない。一瞬リアルに戻って客観的に画面を見てしまうあの瞬間が一度も来ない。
ストーリーも単純明快で、主人公達のやるべきことが明示されている。敵の目的も分かりやすく、それを提示されるタイミングや状況も違和感がない。
クソ映画特有の「は?なんでそうしたの?何考えてんの?それいつ言ったの?なんでそれしなきゃいけないの?言ってることの意味が分かんないけど?」がひとつもない。
王道を使った単純かつ面白いストーリー。そして確かなバックグラウンドがあり説得力のあるキャラクター。それらをまとめて適切なタイミング、適切な方法で提示していく演出。
どこを切り取っても隙がない。
そして極限まで減点を削り取ったところにあの映像美。観客の心を鷲掴みにして画面の中に引きずり込む。
極論、スパイダーマンを知らなくても楽しめる。別に大袈裟なこと言ってるわけじゃなく、マジでスパイダーマンっていう壁にひっついて糸使って戦う正義のヒーローってことだけ知ってれば大丈夫。
とにかく面白かった。
スパイダーバース、一見の価値ありです。